子どもの場合は、大人にはない発育という利点を利用し、不足している成長を促進させることで理想的な形態（歯並び）、機能（正しい咀嚼、呼吸）の獲得が可能です。人間は幼児期に上顎が先行して発育、その後下顎が発育します。
その発育時期を見極め、成長に寄り添い、成長に合わせて矯正することで最小の介入で最大の効果を得ることができます。
小児矯正（顎顔面矯正）治療により単なる抜歯をして見た目の歯並びのみを整える矯正治療ではなく、歯並びを根本から治療し、体そのものを健康にし、機能的で美しい咬み合わせを作る矯正を行っています。
当院では、子どもの歯並びの改善を目的に、小児歯列矯正を行っています。歯並びが悪くなる主な原因として、食生活の変化などにより顎の発達が十分でなく、歯が並ぶスペースが不足しているケースが多く見られます。
歯並びの問題は、見た目だけでなく健康にも大きな影響を与えると考えています。例えば、顎が小さいことによる歯列不正は、虫歯のリスクを高めたり、口呼吸を引き起こしたりするだけでなく、睡眠時無呼吸症候群につながる可能性もあります。
子どもの矯正はどのような状況になった場合に検討するべきでしょうか？
お子さんの歯並びが乱れている場合、実際には上顎や下顎が小さく、歯が正しく並ぶための十分なスペースが確保できていないケースもあります。こうした状況では、早い段階から歯列矯正を検討するのも一つの方法でしょう。また、歯並びや噛み合わせと口呼吸との間には深い関わりがあるとされており、普段から口を開けていることが多いお子さんで、歯並びや噛み合わせに問題がある場合は注意が必要です。頻繁に口を開けているのは、鼻呼吸よりも口呼吸の頻度が高いことが原因で、この状態が続くと空気中の細菌やウイルスが喉から体内に入りやすくなります。それに加え、口の中が乾燥し唾液の分泌量が減ることで、汚れや細菌が洗い流されにくくなり、虫歯のリスクも高まってしまいます。
患者それぞれに合った矯正治療を提案する
子どものうちから歯列矯正をする利点とは何でしょうか？
当院の小児歯列矯正は、お子さんの健康を支えることを目的とし、顎の発育を促すことで、永久歯がきちんと並ぶための土台づくりを重視しています。上顎の成長は5〜6歳で約90％が完了し、10〜11歳頃にはほぼ発育が終わるとされています。こうした成長のタイミングをふまえると、顎の発達期である幼少期に矯正を始めるのが望ましいと考えられます。そのため、当院では主に幼稚園の年長から小学校低学年くらいの時期に矯正治療をスタートしています。顎の成長を促すことで、抜歯をせずに自然な形で歯列を整えることができるだけでなく、顎が小さく気道が狭いことが原因で睡眠時無呼吸症候群を引き起こしているような場合でも、しっかりと眠れるよう導くことが可能です。また、矯正治療には、お子さんご本人とご家族の理解と協力も欠かせない大切な要素だと考えています。
顎顔面矯正で鼻の通りがよくなることを確認している
藤本歯科長洲医院で行う歯列矯正の流れについて教えてください。
まずはじめに、顔全体や口腔内の写真撮影、エックス線検査などを行い、お子さんの歯並びや噛み合わせ、顎の状態を詳しく確認したうえで、矯正が必要かどうかを総合的に判断します。矯正を行う際には、お子さんのお口の型を取り、それぞれに適した固定式の矯正装置を作製・装着します。また、必要に応じて、就寝時のみ使用する装置を併用することもあります。加えて当院では、顎の発育をより効果的に促すために、噛む力を鍛えるトレーニングも取り入れています。これは、ガムを左右の奥歯でしっかりと噛む練習で、1日約30分程度継続していただきます。さらに、口が開いたままになりやすいお子さんには、口を閉じる習慣をつけるトレーニングも並行して行います。治療期間は通常2〜3年ほどを見込んでいます。
検査機器を充実させ、正確な診断を心がける
矯正期間中や終了後に気をつけておかないといけないことはありますか？
固定式の矯正装置を使用すると、どうしても歯磨きがしにくい箇所が出てきてしまいます。そのため、当院ではご自宅での正しい磨き方を指導するとともに、月に1回程度の通院で歯科衛生士によるプロのクリーニングを受けていただくことをおすすめしています。また、矯正期間中は顎の成長に合わせて装置を新しく作製し、交換する必要があるため、定期的なチェックも欠かせません。なお、お子さんの顎の発育が終了した後、さらに歯並びを整えたい場合には、ブラケットとワイヤーを使用する「第二期矯正」を検討されるのがよいでしょう。
矯正治療中は月に１度の検診をしている
藤本歯科長洲医院での歯列矯正の特徴などを教えてください。
当院は地域密着の歯科クリニックで、親子やご家族で通院されるのも珍しくありません。これまで培ってきた信頼関係のもとで、ご自分の歯並びが悪い方などは「孫や子どもに同じ思いをさせたくない」という気持ちから、当院での小児歯列矯正に興味を持たれるケースが多いようです。お子さんも早くから磨き方の指導を受けるなどクリニックの雰囲気に親しんでいるせいか、歯列矯正もスムーズに始められると感じています。また、歯列矯正を専門とする歯科医師が月に2日診療に来ており、きちんと引き継ぎをした上で2期矯正に対応できるのも強みです。
小児の矯正に力を入れている
近年、子どもの睡眠時無呼吸症候群の発症率が増加しているようです。寝ている時に呼吸が止まる、口をポカンと開けたままにしている、または就寝中によくいびきをかくといった習慣は、呼吸が苦しいサインである可能性があります。
こうした息苦しさや睡眠の質の低下は、眠そうな表情や集中力の欠如といった態度に現れるだけでなく、心肺機能の低下や成長ホルモンの分泌不足を招く恐れもあります。
当院では、単に歯並びの美しさを追求するだけでなく、お子さんの健康を第一に考えた自然な矯正を目指しています。矯正は自費診療となりますが、お子さんの口の開きや日中の眠気、いびき、さらには姿勢の悪さなどが気になる場合は、成長期のタイミングが矯正を始める良い機会です。ぜひ早めにご相談ください。
小児矯正は、小児期に土台を作ることを目的としておこなう第一期矯正です。
すべての歯が生え揃ってから、緊密な咬合を獲得すべく仕上げの矯正を行うこともあります。それを第二期矯正といいます。
発育は人により様々で、ひとつとして同じ成長発育はありません。
遺伝要因が強い場合は、外科処置の併用が必要となるケースもあります。
このような治療は1期治療、予防矯正とも呼ばれていますが、正常な機能と発育を一刻も早く取り戻す、まさに不正咬合の芽を摘む治療と言えます。
成人になってからの矯正の場合、骨格が出来上がってしまっているため歯並びを綺麗にするためには抜歯しなければならないケースが多く、その分既往症なども含めてリスクが多くなってしまいますが、顎を大きくする治療の場合は、抜歯しなければならないケースはほとんどありません。